『STENCIL』という単語を辞書で調べると、『合羽板』、『型付板』、『謄写する』等と訳されています。
つまりある面に型を当て、その型に切り抜かれた文字や図柄に沿って写し込んで行く時の原版やその作業を意味します。
ステンシルマークとは切り抜かれた型板の事で日本では刷り込みマーク板などと言われておりました。
文字や図柄に沿って切り込んで行くわけですから、どこかに繋ぎ目を入れてやらなければ抜け落ちてしまうところが出てきます。
例えばアルファベットの“O”という文字の上下に少しだけ繋ぎ目を残して切り抜きます。
こうして出来た文字をステンシル文字といい、欧米では『Stencil Alphabets』というひとつのロゴや書体として成り立っています。
流石に漢字では未だ書体としては存在していませんので、その文字ひとつひとつに繋ぎ目を入れて行く事になります。
この『繋ぎ』の役割は文字や図柄を保持するためのものですが抜け落ちない為に多く入れれば良いと言うものでもありません。
つまり『繋ぎ』を入れても本来の文字や図柄がきちんと認識出来なければいけません。
型としての『強度』と『表示する』という機能の両方が求められるわけで、このへんがマーク屋としての腕の見せ所です。
ステンシルマークを使用した表示方式は横浜開港以降欧米から伝わった文化のひとつであると考えますが、
横浜の老舗である銅巳之マーク(創業1868年現(株)銅巳之)さんが日本国内での草分けであると思います。
三浦マークの創業者である三浦修正(1912年-1984年)も、この銅巳之マークさんで修行を積み、戦後復員後に
刷り込みマーク板の製作所として会社を起こしました。
横浜港は日本で最大の貿易港であり、戦後の経済成長に伴って多くの貨物が港から出荷されました。
海外へ輸出される貨物の荷姿は主に木箱でしたが、その木箱の外装には貨物を識別するためのマーク(シッピングマーク)が
表示されており、このマークを木箱に印刷する方法のひとつとしてステンシルマークが用いられました。
当時はすべてが手彫りと手作業による仕上げのためかなりの根気と労力を要したようです。
何点かの原版と製品が残されていますが、今見るととても新鮮で製品というよりも『作品』と言っても良いくらいの見事な出来栄えです。
現在、このステンシルマークを使った表示方式を採用そているものはごく僅かで、コーヒー豆を入れるマタイ袋、
ワインやウイスキー等の樽、プロパンガスボンベへの表示等があります。